事業承継・引継ぎ補助金の概要|3つの申請枠と手続きの流れについて
中小企業や個人事業主など、規模の小さな事業者が事業承継や M&Aに取り組むときは、「事業承継・引継ぎ補助金」の活用も検討してみましょう。大きな取り組みに対しコスト面で不安があるかもしれませんが、その負担を軽減することができます。
ここではこの補助金の基本的な情報、3つの申請枠と申し込みの流れについて説明しています。
※公募時期により条件等の詳細が変わることもあるため、本格的に取り組む際は 最新情報を要チェック。
事業承継・引継ぎ補助金による補助対象とは
事業承継・引継ぎ補助金は、事業再編や事業統合に伴って経営資源の引き継ぎを行う事業者を対象とした支援制度です。
そこで「後継者に譲り渡す」「 M&Aを進める」などの取り組みが補助対象事業となります。
補助の対象となる具体的な経費は申請枠によっても異なりますが、たとえば専門家を利用したときの報酬や、マーケティング費用、価値算定費用、デューデリジェンス費用、クロージングの手数料、不動産登記にかかる費用、許認可取得費用などが含まれます。
※前提として、補助対象事業のために必要な経費であること、そして特定の期間内に支払った経費でなくてはならない。
※交付決定以降に発注~納品~支払いまでが完了したものに限定されるため要注意。
対象となる「中小企業者等」とは
この補助金の対象者になれるのは一定以下の規模にある「中小企業者等」です。
規模の判定については、サービス業、卸売業、小売業、製造業その他に分類されて業種ごとに満たすべき基準が設定されています。
少なくとも①資本金 5,000万円以下、または②従業員数 50人以下、のいずれかを満たすなら要件は満たせます。
逆に、資本金が 3億円を超える法人であって従業員数も 900人を超えるなら同制度のいう「中小企業者等」には該当しません。
なお、社会福祉法人や一般社団法人、一般財団法人、学校法人などの法人は対象外です。
また、過去3年分について年平均の課税所得が 15億円を超える場合も対象外となります。
3つの枠組みについて
事業承継・引継ぎ補助金には3つの申請枠があり、さらに細分化した類型が設けられているものもあります。
- 経営革新枠
- 創業支援類型
- 経営者交代類型
- M&A類型
- 専門家活用枠
- 買い手支援類型
- 売り手支援類型
- 廃業・再チャレンジ枠
経営革新枠
「経営革新枠」は、次の新事業活動を通じて“経営の相当程度の向上”を目指す事業者の利用を前提とする申請枠です。
- 新商品・新役務の開発や生産、または提供
- 製品の新たな販売方式や生産方式の導入
- 役務の新たな提供方式の導入
- 技術に係る研究開発
- その他の新たな事業活動
補助上限は 600万円~ 800万円、補助率は基本的に 1/2で場合によっては 2/3に引き上げられます。
なお、各類型は事業承継の手段に応じて分かれています。
創業支援類型( Ⅰ型) | 事業承継を契機に創業を行い、経営革新等に取り組むケース |
---|---|
経営者交代類型( Ⅱ型) | 親族や従業員に承継することで引き継ぎ、経営革新等に取り組むケース |
M&A類型( Ⅲ型) | M&Aを通じて経営革新等に取り組むケース |
専門家活用枠
「専門家活用枠」は、 M&Aを進めるにあたって専門家を利用する場合に利用できる申請枠です。 M&A支援機関登録制度に登録した M&A専門業者、金融機関、商工団体、士業専門家(税理士等)に対する支払いについて、最大 600万円(廃業費については 150万円以内で上乗せ)が補助されます。
一定の補助事業期間内に M&Aに着手もしくは実施することが条件とされています。つまり、 M&Aの相手方と基本合意書が締結されていることが求められます。
また、 M&Aの立場に応じて類型が分けられています。
買い手支援類型( Ⅰ型) | 株式・経営資源を譲り受ける側の中小企業者。補助率は「 2/3以内」。 |
---|---|
売り手支援類型( Ⅱ型) | 株式・経営資源を譲り渡す側の中小企業者。補助率は「 1/2または 2/3以内」。 |
廃業・再チャレンジ枠
「廃業・再チャレンジ枠」は、 M&Aが上手くいかなかった事業者向けの申請枠です。
具体的には以下の要件を満たした事業者が利用でき、既存事業を廃業するための経費について補助を受けられます。
- 一度売手として 6ヶ月以上 M&Aに取り組んだ実績がある
- 新たに雇用の創出や需要の創造に寄与するチャレンジを始める
- 会社自体の廃業手続きを完了させる
申請に通れば、補助率 2/3以内で、最大 150万円の補助金が受けられます。
交付申請までの流れ
事業承継・引継ぎ補助金を利用する大まかな流れは以下のとおりです。
- 該当する枠を選択する(専門家活用枠や経営革新枠など)
- オンライン補助金申請システム「 jGrants(ジェイグランツ)」の利用環境を整える( gBizIDプライムという IDの取得が必要)
- 必要書類の準備(履歴事項全部証明書または住民票、その他枠ごとに定められている提出書類を作成・取得する)
- 補助事業計画の策定(どんな事業を、どのように進めるのか、どのような経費が発生するのか、などをまとめる)
- jGrantsから交付申請を行う
なお、補助金の交付を受けた事業者についてはその後も継続的に事業の進行状況について報告しなければなりません。申請から報告義務の履行に至るまで、事業者には事務的な大きな負担がかかるため、専門家の協力も仰ぎながら進めることをおすすめします。
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税理士紹介

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- 税理士
- 越智 文夫(オチ フミオ)
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- 所属
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- 東京税理士会
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- 経歴
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昭和24年、東京都生まれ。東京経済大学卒業。
「人のためになる仕事をしたい」「巡り合った方のお力になりたい」と考え、税理士を志す。
大学卒業後に税理士資格を取得。昭和55年池袋に事務所を構え、以来38年、個人・法人に関係なく様々な方のご相談を伺い、税務申告や会計業務でお悩みの解決をサポートしている。
Office Overview
事務所概要
事務所名 | 税理士法人HOPEオフィス |
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所属 | 東京税理士会 |
税理士 | 越智 文夫(オチ フミオ) |
所在地 | 〒171-0022 東京都豊島区南池袋2丁目31番5号 南大和ビル3階 |
電話番号 | 03-3987-5301 |
対応時間 | 平日 9:00〜17:00(事前予約で時間外対応可能) |
定休日 | 土・日・祝(事前予約で休日対応可能) |
